COVID-19流行によるコンタクトセンターへの影響
COVID-19の流行は日常生活はもちろんのこと、ビジネス領域においても大きな影響を与えています。コンタクトセンターにおいても同様であり、COVID-19はコンタクトセンターの運営について多くの企業が再検討しなければならない状況を生じさせています。
今回のCOVID-19流行下において、コンタクトセンターでもクラスター感染が発生しています。多くのオペレーターが集まり、対話(発声)によるやり取りを行う場であるコンタクトセンターでは3密(密閉、密集、密接)環境が作られやすく、飛沫が発生してしまう状況にあるのです。
従来のようなオペレーターをコンタクトセンターに集めて応対する方法がCOVID-19感染へのリスクを高めてしまうことから、多くのコンタクトセンターで対策が進んでいます。
在宅コンタクトセンターの設置
COVID-19対策として現在多くのコンタクトセンターが取り組んでいるのが「在宅コンタクトセンター」の設置です。一部企業において在宅コンタクトセンターを採用していたケースは見られたものの、在宅での応対には家庭音が背後に入ってしまう点などを敬遠して採用してこなかったコンタクトセンターがほとんどでした。
しかし、感染予防への取り組みとして在宅コンタクトセンターを活用することでオペレーターの出勤や3密状態を回避する動きが進んでいるのです。実際にCOVID-19流行以降、在宅コンタクトセンターの設置に向けた案件が活発に動いています。
特に、クラウドサービスとして提供されているコンタクトセンタープラットフォームを利用して、早期に在宅コンタクトセンター設置を目指す動きが強まっている点が特徴と言えるでしょう。
AI技術の活用に向けた動きが進む
ここ数年大規模コンタクトセンターを中心にAI技術の活用が進んできました。元々は効率化を目的とした取り組みが先行してきたものの、今回のCOVID-19流行に伴うコンタクトセンター応対方法の多様化(在宅コンタクトセンター利用など)や対面でのやり取り(相談や報告など)が困難となったことなどを受けてAI技術を活用してオペレーター支援や顧客満足度低下を防ぐ動きが規模の大小を問わず出てきているのです。
「音声認識」「音声合成」「自然言語処理」などのAI技術を中心に導入や試験導入が進むなど、コンタクトセンターにおけるAI技術活用は更に速度を上げて普及していく可能性が高まっています。
弊社の宣伝を挟んでしまい恐縮ではございますが、現在音声認識技術にスポットを当てた市場調査レポート「音声認識市場動向2021」を作成しております。音声認識技術の活用において市場をけん引しているコンタクトセンターの動向についてもまとめていきますので、興味をお持ちの企業/ご担当者様がいらっしゃいましたら是非お問い合わせ頂ければと思います。
話を戻します。上述の通り、現在コンタクトセンターにおいてはCOVID-19への対応に向けた在宅コンタクトセンターの導入や既存コンタクトセンタープラットフォーム/システムのクラウド化対応などへの取り組みを先行して行っています。
これらの動きが一段落したコンタクトセンターがAI技術の利用による安定した業務環境の構築などへの検討を進めている状況であり、まさに現在から来年に向けてAI技術の取り込みを進めるコンタクトセンターが増えるでしょう。
自動化による省力化への取り組みも増加する可能性
AI技術の活用と共に検討が進むと見られるのが「自動化」への取り組みです。従来のようにオペレーターを集約して対応することや出社した従業員が応対するといったことが現時点では難しくなっていることを受け、人(人数)に依存する形での応対が困難な状況です。
もともと労働人口の減少によりオペレーター確保が課題となっていたコンタクトセンター業界で今回のCOVID-19によるクラスター発生は人材確保の観点からも影響を受ける可能性が高くなっています。
そこで、従来から検討が進んでいた「自動化」の本格的な展開が進んでいく可能性が増えています。「自動化」の1つとして普及が進んだ自動応答(IVR)は自動化の主要な例となりますが、ここ最近ではチャットボットの利用などが注目を集め、導入が進んできています。
限られた要員をより重要な応対業務へと割り振り、応対内容が簡潔なものなどは自動化していく動きが今後更に増えていくと思われます。
コンタクトセンターの再構成につながる可能性も
今回は簡単にCOVID-19流行に伴うコンタクトセンターに与えた影響やコンタクトセンター 側の対応に関してまとめてみました。
コンタクトセンタープラットフォームおよび各種システムがオンプレミスからクラウドサービスへと切り替わる動きがここ数年間見られましたが、今回のCOVID-19はそれを更に加速させる可能性が高くなっているように見えます。
また、クラウドサービスへと切り替えたコンタクトセンターであっても完全クラウド化にまでは至っていないケースが多く見られましたが、今回を機に完全クラウド化に向けた動きを進める案件も増えている様子です。
COVID-19の感染者数は世界全体を見渡してもまだ収まる気配を見せておらず、日本もまた同様に収束までの道筋が見えている状況にはありません。
After/With COVID-19時代あるいは今後再び未知の感染症が発生する可能性を考慮してニューノーマルな働き方をコンタクトセンターでも検討していかなければならないでしょう。今回をきっかけとして、コンタクトセンター自体および業務内容の再構成が迫られることも十分に考えられるのではないでしょうか。
弊社でも今後どのような形で動いていくのかを見続けていきます。