デジタル社会の実現に向けた国側の新たな取り組みが開始されました

第1回デジタル社会構想会議

2021年9月28日(火)にデジタル庁主催の「デジタル社会構想会議」の第1回目の会合が行われたようです。菅総理肝煎りのデジタル庁によるデジタル社会実現に向けた第一歩目が踏み出されたことになります。

2021年9月30日現在、議事録の公開は行われていませんが、議事次第や各構成員提出資料が公開されていましたので、早速閲覧してきました。

<参考:第1回デジタル社会構想会議>

ページ移転のお知らせ:第1回デジタル社会構想会議|デジタル庁
デジタル庁は、デジタル社会形成の司令塔として、未来志向のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を大胆に推進し、デジタル時代の官民のインフラを一気呵成に作り上げることを目指します。

当然のことながら弊社でも記載事項すべてに関する知見があるわけではないので、あくまでも掲載資料中心となりますが、内容の整理をしていきたいと思います。

まず最初として、デジタル社会実現に向けた国を中心とした政策の直近の変遷や方向性に関して整理をしてみました。後日、「デジタル社会構想会議」に提出された、各構成員の方々の資料を整理した記事などもまとめます。

デジタル社会実現に向けたこれまでの経緯や今後の取り組み

直近のデジタル改革の流れ

2020年(令和2年)9月、菅総理の指示の元デジタル庁設置やIT基本法の抜本改正に係る法案提出などが「デジタル改革関係閣僚会議」において定められます。

その後、同年12月に「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」(リンク先PDF)、「デジタル・ガバメント実行計画」が閣議決定されます。

令和3年に入り、2月に「デジタル改革関連法案(リンク先PDF)の閣議決定および国会提出が行われ、5月に国会審議を経て成立/公布されました。

6月に「デジタル社会の実現に向けた重点計画」が閣議決定され、9月のデジタル庁創設を待たずして「デジタル社会形成基本法」に基づく重点計画の推進を進めていくべき重点施策を示しました。

その後、9月1日にデジタル庁が発足し、9月28日に今回取り上げる「デジタル社会構想会議」の第1回会合が開かれました。

デジタル社会の目指すビジョン

デジタルの活用により、一人一人のニーズに合ったサービスを選ぶことができ、
 多様な幸せが実現できる社会

〜誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化〜

デジタル社会構想会議資料より「デジタル社会の目指すビジョン」

上記が、今後デジタル庁を中心に実現を目指していくデジタル社会が目指していくビジョンとなります。デジタル社会を実現することで可能となることとして、以下のようなものが挙げられています。

「ライフイベントに係る手続きの自動化・ワンストップ化」として、官民の提供するライフイベントに係る手続きやサービスについてスマートフォンでワンストップで実行できるといったことや、出生/就学/子育て/介護などのライフステージに合わせて必要となる手続きについて時間軸に沿った最適なタイミングでプッシュ型の通知が受けられるといったことが挙げられています。

「データ資源を活用して、一人一人に合ったサービスを」として、散在する健診情報/既往症/薬歴/日々のバイタル情報などの安全/安心な連携/活用により「いつでもどこでも」一人一人の状況に合った健康/医療/福祉サービスが受けられるといったこと、リアルタイムの移動ニーズ/鉄道やバスの運行状況/カーシェアの空き状況等の連携によりストレスなく移動するといったことなどが挙げられています。

「いつでもどこでも自らの選択で社会に参画」として、子育てや介護に適した豊かな自然環境に恵まれた場所に暮らしながら通勤することなくデジタル空間で仕事ができるといったこと、自宅に居ながら世界中の優れた教育機関の教育プログラムの受講や文化/芸術コンテンツを体感/創作/発信することができるようになるといったことなどが挙げられています。

デジタル社会を形成するための基本原則

デジタル社会を形成するための基本原則として、10原則を掲げています。基本原則ということで抽象的な表現も多いことから、今回は資料に記載されていることをまとめるに留めます。

1.オープン・透明

a.標準化や情報公開により官民の連携を推進

b.個人認証・ベース・レジストリ等のデータ共通基盤の民間利用を推進

c.AI等の活用と透明性確保の両立

d.国民への説明責任を果たす

2.公平・倫理

a.データのバイアス等による不公平な取り扱いを起こさない

b.個人が自分の情報を主体的にコントロール

3.安全・安心

a.デジタルで生涯安全・安心して暮らせる社会の構築

b.サイバーセキュリティ対策で安全性を強化

c.デジタルの着用を進め、個人情報保護や不正利用防止で、デジタル利用の不安低減

4.継続・安定・強靭

a.社会の活力の維持・向上

b.環境との共生を通じたサステナビリティ確保

c.機器故障、事故等のリスクに備えた冗長性確保

d.分散と成長の両立によるレジリエンスの強化

5.社会課題の解決

a.デジタル社会に向けて、制度・ルール等の再構築、国・地方・民間の連携強化・コスト低減にいより、成長のための基盤整備

b.公共施設のネットワーク整備やマイナンバーカード等の活用による災害や感染症に強い社会の構築

c.デジタル人材の育成及び官民・地域横断的な活躍促進

6.迅速・柔軟

a.「小さく産んで大きく育てる」、デジタルならではのスピード化の実現

b.社会状況やニーズの変化に柔軟に対応できるシステム

c.アジャイル発想を活用し、費用を抑えつつ高い成果を実現

d.構想・設計段階から重要な価値を考慮しアーキテクチャに組み込む

7.包摂・多様性

a.アクセシビリティの確保、情報通信インフラの充実

b.高齢・障害・病気・育児・介護と社会参加の両立

c.多様な価値観やライフスタイルへの対応

8.浸透

a.国民に「お得」なデジタル化でデジタル利用率向上

b.デジタルを使う側・提供する側双方への教育で、「わかりやすい」「楽しい」デジタル化を目指す

c.国民にデジタルの成果を実感してもらい、置いてけぼりを作らない

9.新たな価値の創造

a.官民のデータ資源を最大限に活用

b.利用者視点で付加価値を創出するイノベーションの促進により経済や文化を成長させる

10.飛躍・国際貢献

a.国民が圧倒的便利さを実感するデジタル化の実現

b.デジタル化が進んでいない分野こそ、デジタル3原則(※)の貫徹で一気にレベルを引き上げ、多様性のある社会を形成

c.デジタルの活用により地方が独自の魅力を発揮

d.自由や信頼を大切にするデータ・デジタル政策で世界をリード

※デジタル3原則:デジタルファースト、ワンスオンリー、コネクテッドワンストップ

デジタル社会の形成に向けたトータルデザイン

「デジタル社会の実現に向けた重点計画」を元にecarlate作成

正直、資料に掲載された図を見てすべての内容を理解することが難しかったのもあり、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」の本文を確認して整理してみました。弊社なりの整理になるので、多少強引にまとめている部分がある点をご理解した上で見て頂けると幸いです。

国民に向けてデジタルを用いた各種サービスを提供するにあたり、まず3つの階層での取り組みが必要とされています。それぞれの内容を見ていきます。ただし、それぞれの取り組み詳細に関してはかなりのボリュームとなりますので、今回は概要を示すに留めます。より細かな内容については別途記事にまとめていき、まとめ次第記事へのリンクなどを準備していこうと思います。

徹底したUI・UXの改善と国民向けサービスの実現

「デジタル社会の実現に向けた重点計画」を元にecarlate作成

国民へのサービス提供を行う上でのフロント部分(接点部分)における取り組み施策になります。デジタル社会を実現するにあたり、国民がデジタル活用の利益を享受する仕組みが整えられていなければ意味がありません。

そのため、国民目線に立ったUI(User Interface)とUX(User Experience)を実現することが必要とされます。国民がサービスを利用するにあたり、快適な操作性や視認性に優れたサービスが提供される環境を用意することで誰もがそのサービスを使いこなすことができてこそ、デジタル社会を実現する意味が出てくるのです。

「サービスの提供」については準公共および民間へ国や自治体などから口出しをすることはできないことから、UI/UXへの取り組みについてはそれぞれの企業/団体が個別に取り組むこととなります。

また、「システムの整備」に関しても民間については各企業/団体が自社の戦略に合わせて行なっていくものであり、これについても民間への口出しはできません。しかし、国や自治体、準公共に関してはこれまで独自に「システムの整備」を行なってきたり、個別バラバラにオンライン化を進めてきたりしたことによって生じた弊害がCOVID-19への対応を行う中で明らかになったのを契機として、ユーザーニーズに沿った形での柔軟なシステムを、極力統一化/共通化して整備する方向へと変わっていこうとしています。

そして、「サービスの提供」「システムの整備」にもつながるデータの取り扱いについて、データ量の増加や多様化が進む中で利活用していくための取り組みが必要となっている。データの信頼性確保への取り組みを進めつつ、標準化を含む共通ルールの整備や正確性/最新性を確保したデータベース整備を行なっていくための施策を実施することが検討されています。それに併せて、行政が持つ各種データのオープンデータ化を進めるなどのデータ利活用を支援する動きも進めていく予定です。

デジタル社会の共通機能の整備・普及

国・自治体、民間企業とも、デジタル社会に必要な共通機能の整備や普及を進めることにより、国民サービスを提供する際の基盤整備を進めていくことが示されています。

基盤整備については「ID制度の整備・利用拡大」「認証制度の整備・利用拡大」「インフラの構築・提供」の3つの視点が掲げられています。それぞれの内容について見ていきます。

ID制度の整備・利用拡大

「マイナンバーカード」の普及および「マイナンバー」の利活用促進がまず最初に取り組んでいくべき事柄となっています。2022年度(令和4年度)末までにマイナンバーカードがほぼ全国民に行き渡ることを目標と掲げ、それに併せてマイナンバーの利活用の幅を広げていくことを想定しています。例えば、健康保険証としての利用や運転免許証との一体化、在留カードとの一体化などです。

そして、「デジタル・ガバメント実行計画」の工程表に沿ってマイナンバー制度の抜本的改善も進めていく予定となっています。具体的には「マイナンバーカードを利用した情報連携」「公金受取口座の登録・利用および預貯金付番の円滑化」「各種免許・国家資格等のデジタル化」などへの取り組みが該当します。

認証制度の整備・利用拡大

電子署名等の普及、新たな認証の仕組みを検討を進めていく予定となっています。

インフラの構築・提供

共通基盤/機能を提供する複数クラウドサービス(SaaS、IaaS、PaaS)を利用する環境として「ガバメントクラウド」の整備を進め、2021年度(令和3年)中に運用を開始する予定となっています。

また、信頼と実績がある最新技術を採用した「ガバメントネットワーク」を再構築、順次行政機関等が同ネットワークの利用へ移行していく予定となっています。

更に、地方公共団体の基幹業務システムの統一/標準化およびオンライン化を促進することにより、例えば引っ越しなどで異なる自治体へ居住地域が変わったとしても同様の手続きなどのサービスを享受することができる環境を作っていくことも掲げられています。

包括的データ戦略

例えば行政手続きのワンスオンリーを実現するなどデータの活用を行うことで国民がより良い行政サービスや民間サービスを享受することができ、より豊かな生活を実現していくことがデジタル社会では目指されています。それにあたり重要となる各種データに関する戦略も示されています。

まず、「公的機関等で登録・公開され、様々な場面で参照される、人、法人、土地、建物、資格等の社会の基本データであり、正確性や最新性が確保された社会の基盤となるデータベース」と定義された「ベース・レジストリ」の整備を進めることを挙げています。2020年12月にベース・レジストリ・ロードマップ(リンク先PDF)の案を策定、同ロードマップに沿う形で「ベース・レジストリ」の整備を進めていくことになります。

また、DFFT(Data Free Flow with Trust)の推進も挙げられています。DFFTとは「信頼性のある自由なデータ流通」と訳され、2019年に当時の総理大臣であった安倍晋三氏が世界経済フォーラム年次総会で提唱した言葉であり、「自由で開かれたデータ流通」「データの安全・安心」をポイントとしています。

デジタル社会において重要となる各種データはプライバシーなど一定の配慮は行うことを前提としつつ、原則は自由に流通することが必要であるとの考え方に沿っている点が特徴です。DFFTの推進により、日本はもちろんのことグローバルにおいてもデータの流通体制を作っていくことを日本として働きかえを今後進めていくことになるとみられます。

終わりに

今回は直近における日本でのデジタル社会実現に向けた各種取り組みの変遷や今後の方向性に関する概要を簡単ではありますが整理してみました。あくまでも概要ということもあり、抽象的な内容なども多いことから資料に書かれていることを単に整理し直しただけの部分もありましたが、少しでも情報の整理に役立てば幸いです。

弊社としてもまだ情報を整理しきれていない部分も多く残っていますし、理解不足の部分も多いかと思います。引き続きデジタル社会の実現に向けた動きを見ていきたいと思っていますので、ブログ記事はもちろんのこと、市場調査レポートなどを通して各企業/団体様の取り組みを支援する情報の提供を行っていきたいと考えています。

また、カスタム調査などで情報収集/分析業務支援なども行っています。ご相談頂けることなどございましたら、お気軽にご連絡頂ければ幸いです。

合同会社ecarlate

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